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2013/09/02

Klan Aileen


「ロック」とは一体なんなのか。この問いかけに対する明確な答えを知る者はおそらく何処にも存在しない。時に抽象的な言葉を使って神格化してみたり、時にそのイメージを伝える為に徹底した背景論を用いる事によりリアルで具体的な表現を用いたりと。現在までロックミュージックは様々な媒体によって実に多くを語られ続けて来た。そして時代時代に共進する様に様々な進化を遂げて来た。多岐にわたる分裂を繰り返し今や複雑に枝分かれした音楽媒体がロックでありそれを一言で表現する事はもはや不可能である。しかし、ロックとは一体なんなのかという答えを今だ、誰しもが追い求め続けている。言うなれば、一度足を踏み入れると永遠に逃れる事のできない世界がロックたる所以。そこに隠されている答えなき旅路に飛び出すロマンスこそがロックなのかもしれない。

現在、何から何までがマニュアル通りに作り上げられている様に見える音楽シーンには絶望感に近い感情を抱かざるを得ない。今まで築き上げて来た歴史を全てデータ化する事により生じたパラダイムシフトは全ての価値を奪い去りいとも簡単に世界は変わってしまった。全ての存在の価値が軽率になってしまった。便利さと引き換えに本来ロック(ロック的な)が持つ生々しい狂気的衝動がまるで排除されてしまったかの様に見える。世界をも動かし兼ねない生のリアルなシーンとはもはや全て過去の事例であり、全ての基準が根本から変わってしまった今の時代に置いてはもはやロックを神格化する発言自体が馬鹿らしく滑稽に見える。今、僕たちはそんな時代に生きているのだ。



冒頭から若干断定的な見解で切り出しましたが今回取りあげるKlan Aileenはそんなシーンなき現代ロック物語の世界に突如として現れた異端児と言えるだろう。ロックのコンテクストはもはやこの場で説明するまでもないが彼等はロックマナーを十分に理解した上でロックを奏でている。古典的な道を選択しつつも独自の解釈でロックを噛み砕きながら模索し、なおかつ聴き手に対し常に挑戦的な姿勢を示す。彼等の楽曲を聴いているうちに感じたのは強烈な自信に満ちあふれた(確信的な)現在のシーンに対する不満を掻き消すかのごとく強靭なアンチテーゼ(インパクト)であった。それは、ある種の懐かしくも汚れなき純白のロックンロールだったのです。



着目すべき点は非常に高い水準で曲が完成されている点にある。それは感覚的ではなく研究を重ねた結果として辿り着いた境地であり、彼等は若くして最初のアルバムの時点ですでに凄まじいクオリティの作品を作り出している。最初に彼等のアルバムを聴いた時「Klan Aileenを聴いてると不思議な気分になる。あえて言わせてもらうとアリス・イン・チェインズとレディオヘッドをグチャグチャに混ぜ合わせてカートコバーンと比較しても決して引けを取らないほど強烈な歌が乗っている感じか。正に90sリバイバルを体現しているバンドだ」とツイッターでは評したが、今、彼等の曲を繰り返し聴くうちにそれとはまた別の印象を抱いている。抱かざるを得なかった。物事を伝える手段として例える事は簡単で言えば誰にでも出来る。しかし彼等の音に耳を澄まして行く事によってより深い場所にKlan Aileenがいる事がわかってきたのだ。



アルバム「Astroride」は聴けば聴くほどに違った顔を見せる。バンド側が意図するものかどうかはわからないが聴く度に彼等の音楽性の深さを思い知る事になる。その1つ1つの楽曲のレベルの高さはもはやアメリカやイギリスでも十分に通用する。彼等が今後どのようなビジョンを持ちどのような進化をとげて行くのかは想像だに出来ないけれどおそらく世界基準のレベルに達するまでにそう時間はかからないであろう。冒頭でも述べた様にもはや明確なシーンなき今のロック界に一石を投じる存在になる可能性を彼等は秘めている。時代に共進して出るべくして出る存在の1つに彼等が位置するのであればこれらから先に広がる世界には少しだけ期待が持てる。そう自然に思わせてくれるロックバンドがKlan Aileenだと「Astroride」を聴いているうちに確信する事ができた。

シーンなき時代の異端児ゆえ待ち受ける道は厳しいとは思います。しかし、世界が彼等の才能に嫉妬し、驚愕する日を今から夢見て今後の人生の楽しみの1つとして見て行きたいと思う。


Klan Aileen
http://klanaileen.com/





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